ITコンサル現場で活かすためのポイント
行動経済学の理論(項目)の一つである、
モラルライセンシング効果 – Moral Licensing Effect – を
ITコンサル実務に活かせるポイントはこちら
・トラブル解決は「良いことをした」わけではない
・序盤に成果がでたときこそ気を付ける
・過去の実績にしがみつくのは老害の始まり
モラルライセンシング効果効果とは
モラルライセンシングは、ノーベル賞を受賞した心理学者ダニエル・カーネマンが提唱した、「よい行いをしたら悪い行いをしてもいい」と感じる心理のことです。
モラルライセンシングとは?起こる要因と陥らないためのポイントを紹介(外部サイト)
というもので、モラル信任効果とも言います。
良い行いをした際、
「あなたは良い行いをしたのでライセンスを与えます」
と言われた気になり
「少しなら悪い行いをしてもいいよね」
と考えてしまう性質です
運動した後に、甘いものを食べたくなったりするのも同じであり、
モラルライセンシング効果は聞いたことがなくても
内容としては日常的に見られる心の動きだと思います
ITコンサル業務に活用する例
トラブル解決は「良いことをした」わけではない
トラブルなどが発生し、多大な労力を割いた結果
まだプロジェクトの途中であるにも関わらず
「これだけ頑張ったから、あとは適当でいいよね」
という心の流れになってしまわないよう気を付けましょう
モラルライセンシング効果の影響はなかなか断ち切るのが難しく
頑張れば頑張るほど、その後のマイナスの反動が大きくなります
プロジェクトとしてみた場合
トラブル(マイナス)の解決により
プラマイゼロになっただけであり
プラスにはなっていません
トラブル解決はプラスのことだと思いたいかもしれませんが
実際にはプラスではないため、そのあとサボっていいことにもなりません
(もしプラスであっても、サボっていいことにはなりませんが・・・)
かけた労力を基準として貢献度合いを判断するのではなく
一歩引いて、お客様にとってプラスのことができているかどうかを
意識しましょう
序盤に成果がでたときこそ気を付ける
ITコンサルは数年単位でのプロジェクトに参画することもよくあります
例えば3年を見込んだ業務改善プロジェクトの場合、
1年目で予想以上に成果がでることもあるでしょう
しかし成果が早めにでたときこそ、注意が必要です
モラルライセンシング効果により、
「ここまで成果が出たから、今後はほどほどでいいか」
と心理が働くためです
重要なのは、プロジェクトが完了した際、
プロジェクト計画時の達成値を満たしているかどうかです
1年目の結果から、あとは余裕をもって達成できそうな場合
そもそも目標値の修正も視野に入れたほうがいいでしょう
修正せず、簡単に達成できそうな目標を目指す場合
2年目以降はあなたが参画する価値が出ないと思われるかもしれません
過去の価値に甘えて、手を抜いてしまうと
「このITコンサル、最近費用に見合った価値を出してないな」
と評価されることになるでしょう
過去の実績にしがみつくのは老害の始まり
組織の中で中堅以上になると、その組織で実績を出した経験があるでしょう
モラルライセンシング効果の観点で考えると
実績(プラス)を出したことにより、
「多少仕事をサボってもOKかも?」
という心理がでてくるかもしれません
私の実感としては、仕事をサボる方向ではなく
他の社員、特に後輩に対して偉そうな態度をとる方向が多いように感じます
過去の過労自慢などし始めたらかなりまずい状況です
超過勤務自体がすでによくないことですが、
「自分はこんなに頑張ってたんだから、あなたたちも同じように頑張れ」
といった論調になりがちです
「自身の過去の実績をもとに、あなたたちに教えてあげよう」
的な発想が老害と呼ばれる第一歩だと感じています
経験をもとにした知見を、他の人に伝えること自体は当然有益ですが
ネックになるのは内容そのものよりも、
態度や、どういう気持ちで言っているのかです
自身が優位に立つための発言か、本当に相手のためを想っての発言かは
隠そうとしても、かなりの精度で見抜かれます
優位に立ちたい心理をぐっと抑え、
謙虚な行動を心がけましょう
まとめ
行動経済学の理論の一つ、モラルライセンシング効果をもとに
成果を上げるなど、何かいいこと(プラス)をした場合、その後にサボる(マイナス)方向への圧力がかかる
この圧力にどのように対応するかが重要
というITコンサル現場での活用方法を紹介しました
ぜひ明日からの業務で意識していただければと思います
注意点ですが、本ブログでは、
行動経済学をお客様を良い方向、最適な方向に導くための効果的な方法の一つとして紹介しています
「自身の都合のいいように操る、誘導する方法」では断じてありません、ご留意ください
他にも現場で使える知識をブログで紹介していますのでご覧ください