【行動経済学×ITコンサル】期待値を正しく把握し、少しだけ超えればいい結果に繋がる

行動経済学をITコンサルとして実践してきた経験を活かし、明日使える知識を紹介します
私のバックグラウンドや具体的なターゲットなどは導入ページをご参照ください

返報性の原理を現場で活かすためのポイント

行動経済学の理論(項目)の一つである、返報性の原理- norm of reciprocity – 

をもとに、ITコンサルタント実務に活用可能な以下ポイントについて記述します

・プロジェクトスコープを完璧に守るのがいいとは限らない
・いいものを提供しても、直ちに見返りを要求しない

返報性の原理とは

人は他人から何らかの施しを受けた場合に、お返しをしなければならないという感情を抱くが、こうした心理をいう。この「返報性の原理」を利用し、小さな貸しで大きな見返りを得る商業上の手法が広く利用されている。
Wikipediaより(外部サイト)

というものです。

してもらったら、お返しをしたくなるというのは自然であり

特に違和感なく理解できるのではないでしょうか

返報性の原理が役に立つ理由

返報性の原理が活用されている例としてよく挙げられるのは

スーパーなどでの試食です

無料で少しもらった結果、

なんとなく商品を買ったほうがいいのかも・・・

という気持ちになったことは誰でもあるでしょう。

ポイントは、返したい気持ちが思っている以上に強いことです
もらったものよりも、多く返したい気持ちになる傾向もあります

提供した試食以上のリターンが期待でき、

実績もあるから試食コーナーは無くならないわけです

何かを売りたい場合

商品の良さを一生懸命訴えるより先に、

こちらから少しでも提供することが実は近道かもしれません

もちろん、試食した食べ物が不味ければ買ってもらえません
先に提供すればなんでも売れるわけではなく
商品そのものの価値はあることが前提となります

ITコンサルの現場に活かす例

プロジェクトスコープを完璧に守るのがいいとは限らない

プロジェクトは契約ベースのことが多いため、

業務として担当する範囲(スコープ)は明確です

※そもそもスコープが曖昧な場合もありますが、それは別の問題ですね・・・

社内プロジェクトの場合は契約でスコープが決まるわけではありませんが

ある程度スコープはお互いに理解できていることが多いでしょう

スコープを守るべきかという問題をよく現場で聞きます

私としては、基本的に

期待されているスコープを少し超えて提供する

ぐらいがいいと考えています

返報性の原理から考えると、

先に提供したほうが結局最終的にはメリットが大きいためです

ただ、実践するのはかなり難しく、以下のポイントに注意が必要です

期待値をコントロールする

そもそもお客様と自身で想定しているスコープが異なる場合を考えます

お客様の想定スコープが大きく、

サービス提供側の想定スコープが小さい傾向があるため、

お客様は「スコープを超えてやってもらった」とは感じず、返報性は成立しません

そこでお客様の想定スコープを適切にコントロールする必要があります

コントロールといっても、サービス提供側の都合のいいようにスコープを印象付けるのではありません

契約で定められたスコープを、あまり強く押し付けないレベルで伝えていきましょう

提案時だけではなく、プロジェクトの途中でも

お客様と共有し、合意をとりつつ進めることで円滑に進みます

文面での合意でなく、口頭での合意であっても効果はあります

スコープを少し超える

もう一点、スコープを少し超える、という点も重要です

スコープを大きく超えてしまう場合のデメリットとして

次回からの契約でも、同程度のスコープ超えを期待されてしまう点があります

例えば、契約上は土日の作業はスコープ外となっているケースにおいて

ほぼ毎週土日に業務を行ってしまった場合

たとえトラブル対応などの理由があったとしても

お客様は「理由があれば土日も対応してくれる人たち」と感じるでしょう

次回のプロジェクトにおいて同様の状況になった際

「トラブルなのに土日に出てくれないなんてひどい」ということになりかねません

もし次のプロジェクトを、あなたではなく他の誰かが担当する場合、

正しくスコープを守ったのに印象が悪くなってしまった

ことになり、あなたが非難されてしまうかもしれません

無事、お客様が期待するスコープを少し超えて提供できれば

満足度は高くなり、追加での契約をもらえる可能性も高まるでしょう

繰り返しになりますが、スコープの前に、本来のサービスの質が重要です

日本においては、実際のところスコープがかなり曖昧であることは多く

柔軟な対応、といった名目でスコープを超えて対応することも多いです

重要なのは、お客様の想定スコープを少し超えることですので

まずはお客様側の想定スコープを正しく把握することに努めましょう

もしお客様がスコープは無限(すべての要望に時間に関係なく対応すべき)という考えをお持ちの場合

返報性を求めることは潔くあきらめ、

想定スコープを超えるのではなく

逆に正しい(契約上の)スコープを切々と訴えていくほうがいいでしょう

良いものを提供しても、直ちに見返りを要求しない

不思議なもので、返報性の原理では、

見返りを要求してしまうと効果が薄れるといわれています

試食の例でも、試食担当者が「食べたんだから、買ってよ!」と態度に出していると

なんとなく買わないような気がしますよね

ITコンサルの現場でも、スコープを超えてサービスを提供した場合、

直ちに見返りを要求するようなことは避けましょう

まず提供があり、リターンがあるかどうかはお客様次第です
むしろリターンを期待しないほうが精神衛生上もよいです

まとめ

行動経済学の理論の一つ、返報性の原理をもとに

・プロジェクトスコープは厳格に守るより、少しスコープを超えて提供したほうが最終的にはリターンが大きい可能性が高い

というITコンサル現場での活用方法を紹介しました

ぜひ明日からの業務で意識していただければと思います

注意点ですが、本ブログでは、

行動経済学をお客様を良い方向、最適な方向に導くための効果的な方法の一つとして紹介しています

「自身の都合のいいように操る、誘導する方法」では断じてありません、ご留意ください

他にも現場で使える知識をブログで紹介していますのでご覧ください

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